レボフロキサシンから「PK/PD」を学ぼう!

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レボフロキサシンを60分で投与しなければいけない理由を知っていますか?
今回はその理由を「PK/PD理論」を通して考えていきたいと思います。

抗菌薬のPK/PD理論

薬物動態「Pharmacokinetics(PK)」薬力学「Pharmacodynamics(PD)」を組み合わせて、薬剤の有効性や安全性を評価する考え方のことをPK/PD理論と言います。
と言っても、イメージしにくいですよね。
簡単に言うと、薬物動態は「薬が感染部位にどのくらい届くのか?」の指標、薬力学は「薬が細菌に対してどのくらい効果を発揮するのか?」の指標と覚えていただければと思います。

抗菌薬のPK/PDパラメータ

以下に示す3種類のPK/PDパラメータが、抗菌薬の有効性を規定すると言われています。

  • 時間依存性(%TAM):β-ラクタム系(ペニシリン系、セフェム系など)
  • ピーク依存性(Cpeak/MIC):アミノグリコシド系、キノロン系
  • 濃度依存性(AUC/MIC):キノロン系、マクロライド系、バンコマイシン

レボフロキサシンとPK/PD

では、レボフロキサシンの有効性を規定するパラメータについて考えていきましょう。
(濃度にも依存しますが、便宜的にピーク依存として考えていきたいと思います。)

1日1回・点滴時間を短くする!

レボフロキサシンは「ガツン!」と濃度をなるべく高く上げてあげた方が良い(ピーク依存性)とされています。
そのため、1日の投与回数は少なく(1日1回)、1回の投与量を多く(500mg)することが有効と考えられています。
また、点滴時間はなるべく短くすることで、血中濃度をより高く上げることが可能です。

点滴時間が短すぎると低血圧のリスク!

とはいえ、点滴時間が短ければ短いほど良いという訳ではありません。
急速静注(ワンショット)はできないんです。
なぜかというと、点滴時間が短すぎると副作用(低血圧)が発現する可能性があるためです。
そのため、点滴時間は60分かけて投与することとされています。

半量(250mg)の場合、点滴時間は?

半量の場合は、点滴時間をどうしたら良いのでしょうか?
実は日本の添付文書には規定されていないんです。
一方、アメリカの添付文書にはその答えが記載されています。

Method of administration
Levofloxacin Ibigen solution for infusion is administered by slow intravenous infusion once or twice daily. The infusion time must be at least 30 minutes for 250 mg or 60 minutes for 500 mg Levofloxacin Ibigen solution for infusion.

250mgの場合、少なくとも30分の時間をかけて投与するよう記載されています。
なるべく血中濃度を上げたいことを考えると、60分よりも30分での投与が推奨できます。
30分で投与したとしても投与量が半量(250mg)であれば、血中濃度が通常より高くなる訳ではないので当然と言えば当然なんですけどね。

「腎機能別投与量」はこちら

同様の理由で、1回750mgを投与したい場合(保険適応外)は点滴時間を90分に設定する必要があると考えられます。
ちなみに、WHO(World Health Organization)およびアメリカの診療ガイドラインでは1回750mg(70kg超は1000mgを考慮)が推奨されています。
日本人の平均体重(男性:64.0kg、女性:52.7kg)を考えると、1回500mgは妥当と考えられますが、、

まとめ

レボフロキサシンのPK/PDパラメータを考えると、投与法は次のようにまとめることができます。

  • 1回500mgを60分かけて1日1回投与
  • 1回250mgを30分かけて1日1回投与

PK/PD理論において、点滴時間って結構大事なんです。
その特徴を知って、より良い抗菌薬治療を提供できるよう取り組んでいきましょう。