1981年にジョージ・T・ドラン氏は効果的な目標設定に必要な5つの因子「SMARTの法則」を提唱しました。
今回は「SMARTの法則」からどう適正使用を促していくのか、考えていきたいと思います。
はじめに
まずはご自身の施設での状況について考えてみてください。
多くの施設で抗菌薬の使用量を調査していると思いますが、ただ報告するだけの作業になっていないですか?
「今月は少し使用量が増えましたが、許容の範囲内だと思います。」
「少し使用量が少し減っているので、このまま続けていきたいと思います。」
こんな報告をしていないですか?
これって、何か患者さんのためになっていますか?
「加算(感染防止対策加算など)を所得するため」
「抗菌薬の使用量からアウトブレイクの検知するため」
確かにそれも大事です。
ただ、具体的に何か対策を行っていますか?
抗菌薬の使用量をただ報告しているだけではダメなんです!
では、どうしたら良いのでしょうか?
目標設定は「SMARTの法則」で!
目標を達成したかどうかわからないと、人は本気になれません。
「SMARTの法則」では、以下に示す5つの因子を満たすよう考えていくことで、優れた目標設定ができると言われています。
Specific(明確であるか?)
まずは、明確(具体的)な目標設定が大切です。
「抗菌薬の使用量を減らしたい」では、ダメなんです。
Measurable(数字で評価できるか?)
達成率や進捗状況を数字で測れなければ、評価できません。
この「明確であること」と「数字で測れること」は特に重要とされています。
抗菌薬の使用量で考えるならば、抗菌薬使用密度(AUD)や抗菌薬使用日数(DOT)がこれにあたります。
Achievable(達成は可能か?)
達成できなければ意味がありません。
現実的な目標設定をしているかということも重要です。
とはいえ、甘すぎる目標設定でも成長は望めません。
だいたい7割くらいの確率で達成できる指標が良いと言われています。
Relevant(関連しているか?)
設定した目標が、目指していくべきところと関連しているかも大切です。
それが抗菌薬の適正使用、より良い感染症治療につながっていますか?
Time-bound(期限が明確か?)
期限が短すぎれば負担になり、遅すぎることも労力になります。
妥当な達成期限を設けていくことが必要です。
ここまでの状況を踏まえた上で、一度ご自身が掲げている目標について考えてみてください。
「SMARTの法則」を活用するために!
抗菌薬の適正使用を促していく場面を例に考えてきたいと思います。
本年度(今年度末まで)の目標として、第3世代経口セフェム系抗菌薬の使用量(AUD)を50%(2013年比)削減したいと考えています。
非常に明確な目標となっていますよね。
誰が見てもわかりやすいように設定することが大切です。
明確な目標を設定した後は、それを達成するために必要な対策(取り組み)について考えていきましょう。
目標達成につながる行動を考える!
研修会の開催・適切な情報を発信
代替薬の提案
採用薬の見直し
明確な目標を設定できた後は「トライ・アンド・エラー」の繰り返しです。
「PDCA」や「DCPA」と呼ばれるサイクルを回して試行錯誤していきましょう。
例では、第3世代経口セフェム系抗菌薬の使用量を題材に提示させていただきましたが、皆さんの施設では削減できていますか?
私自身色々取り組んでいく中で、一番効果的であったのは「感染症で有名な講師(医師)を招いて、講演(院内感染対策講習会)していただいたこと」です。
病院機能評価などを利用して散々啓蒙活動を行ってもなかなか減らせなかった使用量が、専門家の講義一発で約1/3まで削減することができました。
(その後、院内の理解を得られ、採用薬を見直していくことができました。)
やっぱり、有名な先生の言葉ってすごいですね!
さいごに
今回は「SMARTの法則」を用いて、効果的な目標設定についてお話させていただきました。
明確な目標設定は「やる気」や「やりがい」にもつながります。
「適正使用」を「加速」していけるよう、参考にしていただければ嬉しく思います。