爪白癬(水虫)に対する治療薬は?

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白癬(水虫)はないですか?
日本国内の5人に1人は足白癬、10人に1人は爪白癬があると報告されています。
意外と多いと思いませんか?
今回は爪白癬の治療薬について、考えていきたいと思います。

効果の高い「テルビナフィン(ラミシール)」

治療効果が高いとされているのが「テルビナフィン(1997年発売)」です。
この薬を使用することで、約半数(5割)を治癒することができます。
では、全員がこの薬を使用した方がいいのでしょうか?
決してそういう訳ではありません。
どの薬も「一長一短」なため、状況に応じて使い分けることが大切です。

治療に時間がかかる!

「テルビナフィン」の特徴は、治療に6か月以上の期間を要するということです。
半年間以上飲み続けるのは、大変ですよね。
それでも治療成功率は5割しかありません。
このことが、この薬のデメリットであることは間違いありません。

また、「テルビナフィン」は副作用(肝機能障害や血球減少など)にも注意していく必要があります。
そのため、服用中は定期的に血液検査をするように定められています。

一方で、併用禁忌とされる薬がないことは、この薬のメリットとされています。

1日1回125mg(1錠)を食後に服用する。

とにかく毎日の服用が必要となります。
ちなみに、国内では「1日1回125mgを6か月以上」が標準治療(保険適応)となりますが、海外では「1日1回250mgを3か月以上」と定められています。
両者の治療効果は同等とされていますが、このことも治療期間が長くなっている原因の一つです。

短期間治療が可能な「イトラコナゾール(イトリゾール)」

「テルビナフィン」の代替療法として使用されるのが「イトラコナゾール(1993年発売)」です。
この薬の最大の利点は、治療期間が短いということです。
パルス療法と呼ばれる治療を繰り返して治療を行っていきます。

「7日間(1日2回)服用した後に、3週間休薬」 → 3回繰り返す。

3か月(2か月+1週間)で治療が終わると考えると楽ですよね。
休薬期間が定められており、少し複雑な飲み方をするため、しっかりスケジュールを管理して服用できるということが大前提となります。

では、治療成功率はどのくらいでしょうか?
治癒率は3割程と言われています。
10人のうち7人は治療が失敗してしまうんです。
それだけ爪白癬の治療は難しいということでもあります。

なお、この薬(カプセル)は「食直後」に服用する必要があります。
空腹時に内服した場合における体内の血中濃度(AUC)は、1/3に低下してしまうことが知られていますので、注意が必要です。

副作用が少なく、血液検査は必須とはされていないことは、メリットとされています。

相互作用がめちゃくちゃ多い!

「イトラコナゾール」最大のデメリットはここです!
肝臓の代謝酵素である「CYP3A4」、薬を体外に排泄する「P糖蛋白」を阻害する作用があります。
併用薬の代謝・排泄作用も阻害してしまうため、併用薬の作用が強く出てしまうことが特徴です。
睡眠薬や抗血栓薬など、たくさんの薬との相互作用があることを覚えておきましょう。

20年ぶりの新規治療薬「ホスラブコナゾール」

2018年に発売されたのが爪白癬治療薬が「ホスラブコナゾール(ネイリン)」です。
「テルビナフィン」よりも短期間で治療が終了し、副作用が少ないことが期待されています。
とは言え、副作用がない訳ではありません。
4人に1人が副作用を発現し、「テルビナフィン」と同様に肝機能障害が多く報告されていることに注意が必要です。

治療効果は非常に高いです。
「イトラコナゾール」より効果が高く、40~60%の治癒率と言われています。

1日1回1カプセルを12週間服用する。

ちなみに、抗真菌薬は治療期間が終了した後も有効成分が爪の中に残るため、その後も効力を発揮し続けると考えられています。

値段が高い

この薬のデメリットは、値段が高いことです。
1カプセルあたり「817.1円」します。
12週間服用すると「68,636.4円/12週間(3割負担で約2万円)」の費用がかかります。
爪の伸びが悪い場合効果少ないこともデメリットとされています。

塗り薬は?

治療効果は劣るとされていますが、爪白癬の一部(比較的軽症)は塗り薬でも治療することが可能です。
塗り薬の最大のメリットは、飲み薬と違って全身的な副作用の心配がないことではないでしょうか?
国内で承認されている二つの塗り薬について話していきたいと思います。

エフィナコナゾール(クレナフィン)

国内で初めて発売(2014年)された爪白癬に対する塗り薬が「エフィナコナゾール」です。
この薬の登場で、治療の選択肢は劇的に改善しました。
刷毛(はけ)がついているため、爪に塗りやすい製剤であることが、この薬の特徴です。
爪が生え変わるまでの6か月以上の期間、毎日1日1回塗り続けます。

ルリコナゾール(ルコナック)

2016年に発売されたのが「ルリコナゾール」です。
この薬は従来より白癬の治療に使用されている「ルリコン」と同じ成分です。
薬が浸透しづらい爪でも効果が得られるよう、濃度が高く(ルリコンの5倍)なっています。
他の薬剤と比較して、安いことがメリットです。

どっちがいいの?

どちらの薬の方が良いのかっていうことはわかっていません。
そのため、シェアの多いクレナフィンか、爪白癬専用のルリコナゾールどちらを使用しても良いと思います。
それぞれ塗り方や感触に違いがありますので、使用感の良いものを選択しましょう。
人によっては、爪の周囲が被れることがありますので注意しましょう。

さいごに

一旦白く濁ってしまった爪は、生え変わるまでキレイになりません。
爪の生え変わるには、年単位で時間がかかります。
特に塗り薬は、忘れがちです。
治療の際は、根気よく使用し続けましょう。