抗菌薬の届出制を導入している病院はだいぶ増えてきましたが、その運用方法(提出率など)に苦慮している病院も多いのではないでしょうか?
今回はそんな病院のヒントになればと思い、記事を作成しました。
そもそも、なぜ抗菌薬を処方するのに届け出が必要なのでしょうか?
まずは診療報酬上の取り扱いから確認していきましょう。
感染防止対策加算の施設基準
院内の抗菌薬の適正使用を監視するための体制を有すること。
特に、特定抗菌薬(広域スペクトラムを有する抗菌薬、抗MRSA薬等)については、届出制又は許可制の体制をとること。
と記載されています。
届出制を導入することで、主治医がその抗菌薬を処方する時に、本当に必要かを考えるようになり、結果として抗菌薬の適正使用につながるのではないかということです。
では、届出制が導入されていればそれだけでいいのでしょうか?
必ずしも届出制が抗菌薬の適正使用につながる訳ではないことが指摘されています。
まずはフィードバックが大事
届出書は提出して終わりという訳ではありません。
提出された届出書に対して、その使用方法が適切かしっかりと評価をしてフィードバックすることが大事です。
フィードバックをしていなければ、処方医が少し面倒だなと思うだけというのが関の山です。
とは言え、このフィードバックが難しいというのが現実だと思います。
感染症科の医師が常駐していたり、抗菌薬適正使用支援チーム(AST)がリアルタイムにフィードバックできるよう体制が整えられていればそれで問題ないかもしれません。
ただ、実際にそのような介入が行える病院は限りなく少ないのではないでしょうか?
処方医が自分とは普段全くかかわりのない診療科の医師であったら?
指摘しようにも、すごく先輩の医師だったら?
なかなか難しいですよね。
そうは言っても、やっていかなければいけないんですが、、、
届出書の記載様式
皆さんの病院ではどのような届出書を使用していますか?
① シンプルな届出書
これは以前働いていた東京の総合病院で使用されている届出書になります。
めちゃくちゃシンプルですよね。
シンプルで提出が楽なため素早い対応ができるというメリットがある一方で、これのみで使用量の抑制につながるかと言うと、それは難しいというのが現実だと思います。
この病院で実際にどう適正使用を促しているのかと言うと、感染症科の医師が常駐し、抗菌薬適正使用支援チーム(AST)が毎日ラウンドを行っています。
つまり、リアルタイムな介入から適正使用を促しており、届出書はあくまで導入部分という位置づけ、そういった支援の体制を構築しています。
② 確認項目満載の届出書
これも私が以前働いていた別の病院で、2017年に導入した届出書になります。
リアルタイムな介入が行えればそれで問題ありませんが、マンパワーが足りないという病院がほとんどなのではないでしょうか?
この時にどう考えたかと言うと、そもそも処方医が適切に抗菌薬を処方できればそれで問題ない訳です。
であれば、届出書を提出する時に、必要な項目を確認しなければいけない体制にしてしまえばいいのではないか?
そう考えて、この届出書を導入しました。
どちらがいいと思いましたか?
絶対にどっちが良いというのはなく、施設毎に最適な方法を模索していく必要がありますが、皆さんはどう思いましたか?
個人的には後者の方が圧倒的に好みです。
よくリーダーシップやマネジメントの理論でこんな言葉は聞いたことないでしょうか?
「出来る」けどやらない!
「私なら・・」をやめよう!
もちろん自分たちで決めていった方が早いことは間違いありません。
ただ、あなた一人で全ての方をフォローしていくのは不可能ですよね。
全体を考え、より良いマネジメントを目指していくのであれば、「考えさせる」ことが非常に大事であり、それが全体のレベル(質)を上げていくことにつながると考えています。
それを一つの方法として体現したのが後者の届出書であり、まずは強制的に最低限必要なことを考えてもらう、その上で専門的な知識を踏まえたフィードバックを行う!ということを行っていました。
あとは、一つ一つ丁寧に対応することも大事ですね。
将来的には機械(システム)である程度のことはチェックできるような体制を整えられればいいんですけどね。
さいごに
今回は抗菌薬の適正使用を進めていく上で必要な「届出制」についてお話しさせていただきました。
施設によっても状況は違うと思いますが、抗菌薬は環境(周り)にも影響を与える可能性がある薬のため、病院全体で取り組んでいくというのが大切です。
少しでも参考になれば嬉しく思います。