非結核性抗酸菌症(NTM症)も大変!

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非結核性抗酸菌(non-tuberculousis mycobacteria:NTM)は、結核菌・らい菌を除いた約150種類の抗酸菌の総称です。
NTM症は決して珍しい病気ではなく、全抗酸菌症の10~20%を占めると考えられています。
今回は、そんな非結核抗酸菌について考えていきたいと思います。

非結核性抗酸菌とは?

非結核性抗酸菌自体は環境に広く分布しています。
感染が成立したとしても症状は乏しく、病変が緩徐に進行するのが特徴的です。
感染部位としては肺が最も多く、次いでリンパ節、皮膚とされ、全身に播種することもあります。
肺非結核性抗酸菌症のリスク因子としては、免疫抑制状態(HIV感染症など)、呼吸器疾患(嚢胞性線維症、気管支拡張症、COPD、肺がんなど)があげられます。
結核菌と違いヒト―ヒト感染は(一部を除いて)起こさないため、隔離などの空気感染予防策は必要ありません。
結核菌と非結核性抗酸菌の区別は数時間で可能なため、その結果に応じて対応を考えていくことが大切です。

治療は必要か?

非結核性抗酸菌が1回検出されただけでは、非結核性抗酸菌症とは診断できません。
また、非結核性抗酸菌症と診断されても必ずしも治療を始める必要はありません。
病状や基礎疾患の状態、ADL、薬剤費などの様々な因子を考慮して治療開始を判断する必要があり、一律の基準が定められていないというのが現状です。

では、肺非結核性抗酸菌症の治療薬についてみていきたいと思います。

Mycobacterium avium complex(MAC)

  • Mycobacterium avium(西日本で多い)
  • Mycobacterium intracellulare(東日本で多い)

全体の80~90%を占めると言われています。
治療を開始する前にCAMの感受性を確認するようにしましょう。

治療期間:培養陰性化後、最低12カ月(明確な基準はない)

CAM(経口)1回200mg・1日3回
or 1回400mg・1日2回
RFP(経口)1回10mg/kg・1日1回(最大600mg/日・原則食前)
EB(経口)1回15mg/kg・1日1回(最大750mg/日)

重症例、空洞型病変を有する場合には下記を加えます。

SM or KM(筋注)1回15mg/kg以下(最大1000mg)・週2~3回

第一選択薬が使用できない場合、STFXやLVFXなどのキノロン系抗菌薬を考慮し、AMKなどを加える場合もあります。

RBTはRFPよりMACに対する抗菌力が強いとされるが、副作用(ぶどう膜炎、肝障害、好中球減少など)を考慮し、相互作用などでRFPが使用できない場合に限定されています。

治療期間が長期間になるため、副作用(EBの視力障害など)に注意しましょう。

Hot Tub Lung

健常な人がエアロゾル化したMACへの暴露により過敏性肺臓炎様症候群を起こすことがあります。
ジェット噴流を備えた屋内温水浴槽(Hot Tab)などが原因となり、抗原回避(温水浴槽の使用中止)、副腎皮質ステロイド、抗菌薬による治療が行われます。

Mycobacterium kansasii

薬物治療による効果が最も高い非結核性抗酸菌症であり、近畿地方に多いとされています。

治療期間:培養陰性化後、最低12カ月

INH(経口)1回5mg/kg・1日1回(最大300mg/日)
RFP(経口)1回10mg/kg・1日1回(最大600mg/日・原則食前)
EB(経口)1回15mg/kg・1日1回(最大750mg/日)

CAMやLZD、MFLXに感受性を有する場合もあります。

Mycobacterium abscessus complex

  • Mycobacterium abscessus
  • Mycobacterium massiliense
  • Mycobacterium bolletii

M. abscessusは九州沖縄地方に多い傾向があります。
薬剤感受性は様々であるため、原則薬剤感受性検査を行います。

療期間:培養陰性化後、最低12カ月

CAM(経口)1回200mg・1日3回
or 1回400mg・1日2回
AMK(点滴静注)1回15mg/kg・1日1回
IPM/CS(点滴静注)1回0.5mg/kg・1日4回
or 1回1g・1日3回

マクロライド系抗菌薬を1~2剤併用することが重要です。
AMKやIPM/CSを2~4カ月併用し、MFLXやSTFXなどのキノロン系抗菌薬やFRPMを併用することもあります。

さいごに

NTM症の予後は、併存疾患や病勢の進展、治療反応性によって様々です。
治療も少なくとも1年間要しますので、慢性疾患と捉えて付き合っていくことが大切です。
その治療法について少しでも参考になれば嬉しく思います。