マイコプラズマ感染症と言えば?

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マイコプラズマと聞くと何を思い浮かべますか?
「空咳」や「集団感染」でしょうか?
かくいう私も寮生活をしている時に、苦しめられたことがあります。
(ほっといたら治りましたが、、笑)
今回は、たびたび流行するマイコプラズマ感染症について考えてきたいと思います。

マイコプラズマ・ニューモニエとは?

Mycoplasma pneumoniae

マイコプラズマは0.1~5μmと人工培地で発育させることができる最も小さな微生物で、細胞壁(ペプチドグリカン)を持たず、多形性を示します。
呼吸器感染症を引き起こし、普通感冒や上気道炎、細気管支炎、気管支炎、肺炎、胸膜炎が主要病変とされています。
長引く乾性の頑固な咳が特徴とされ、夜間に強くなると言われています。
下痢や悪心などの消化器症状や一過性の肝機能障害を30~40%に認め、10%は発疹を伴います。

感染経路(五類感染症・基幹定点把握疾患)

マイコプラズマは「ヒト」のみが感染源となります。
咳やくしゃみ、会話などを介して飛沫感染し、概ね2~3週間の潜伏期間を経て発症します。

「飛沫感染予防策」はこちら

疫学

その多くは不顕性感染や軽度の上気道炎にとどまります。
3~5%が肺炎に進展しますが、基本的にはほっといても3週間程度で自然治癒します。
成人の非定型肺炎の30~40%、学童~20代では60~70%にも及び、先進国における市中肺炎の10~20%を占めます。

治療薬は?

マイコプラズマは細胞壁を持たないため、細胞壁をターゲットとするβ-ラクタム系抗菌薬などの一般的な抗菌薬は効果がありません。

基本はマクロライド系

マイコプラズマ肺炎の第一選択薬としては、マクロライド系抗菌薬が推奨されています。
一方で近年、マクロライド耐性のマイコプラズマが10~20%報告されています。
マクロライド系抗菌薬で治療を開始して2~3日発熱が持続する場合は、テトラサイクリン系抗菌薬やキノロン系抗菌薬への変更を考慮します。

成人(16歳以上)

外来治療(治療期間:7~10日間)

抗菌薬用法・用量
クラリスロマイシン1回200mg・1日2回
アジスロマイシン1回500mg・1日1回(3日間)
エリスロマイシン1回200mg・1日4~6回

上記治療薬が使用できない場合(第二選択)

抗菌薬用法・用量
ミノサイクリン1回100mg・1日2回
レボフロキサシン1回500mg・1日1回
ガレノキサシン1回400mg・1日1回
モキシフロキサシン1回400mg・1日1回
シタフロキサシン1回100mg・1日2回
1回200mg・1日1回
トスフロキサシン1回150mg・1日2~3回

入院治療(点滴静注)

抗菌薬用法・用量
ミノサイクリン1回100mg・1日2回
アジスロマイシン1回500mg・1日1回
エリスロマイシン1回300~500mg・1日2~3回

上記治療薬が使用できない場合(第二選択)

抗菌薬用法・用量
レボフロキサシン1回500mg・1日1回
シプロフロキサシン1回300mg・1日2回

小児(15歳以下)

抗菌薬用法・用量投与法投与期間
エリスロマイシン25~50mg/kg/日
1日4~6回
経口14日
クラリスロマイシン10~15mg/kg/日
1日2~3回
経口10日
アジスロマイシン10mg/kg/日
1日1回
経口3日
トスフロキサシン12mg/kg/日
1日2回
経口7~14日
ミノサイクリン2~4mg/kg/日
1日2回
経口
点滴静注
7~14日

これらの抗菌薬が投与されても臨床症状に改善が認められない場合は、副腎皮質ステロイドの投与が考慮されるが、安易な投与は控えるべきとされています。

参考資料

日本マイコプラズマ学会から治療指針が公開されており、本記事の治療薬も参考にしています。

さいごに

今回は細胞壁を持たない少し特殊な細菌マイコプラズマについてお話させていただきました。
オリンピック開催年など、散発性流行をしばしば経験します。
参考になれば嬉しく思います。