2021年12月24日に新型コロナウイルス感染症初の経口治療薬「モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)」が医薬品医療機器等法第 14 条の 3 に基づく特例承認を取得しました。
新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」による感染が急増する中、その需要は増えつつあります。
適応(効能又は効果)
「SARS-CoV-2による感染症」であり、注意書きに「重症化リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること」と記載されています。
診断されないと使えない
新型コロナウイルス感染症と診断されなければ使用できません。
(濃厚接触者に対する予防投与は認められていない/治験進行中)
ここで課題なのが、(PCR検査センターなどで)診断されてからこの薬にどうアクセスするかという点です。
陽性と診断された方が公共交通機関を利用しないで、限られた病院にアクセスするのは意外と難しいです。
重症化リスクの高い人であればなおさら難しいと言えるでしょう。
誰でも使えるわけではない
供給量が限られており、治療に約8万円要することから、使用は「重症化リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者」に限られています。
薬が潤沢に供給され、広く一般的に使用されるにはもう少し時間がかかりそうです。
2022年1月22日追記
政府の新型コロナ対策分科会は20日、感染者が今後さらに急増した場合に、「基礎疾患のない若者らは検査をしなくても症状のみで診断」できるよう提言案をまとめました。
一方で、モルヌピラビルの製造販売元のメルクは、昨年10月に発展途上国に薬を普及させるため、ジェネリック医薬品(後発品)の生産を許可しており、その価格は約20ドルと言われています。
インフルエンザの治療(+予防)に使用されるオセルタミビル(商品名:タミフル)の価格が2,557円/10錠(2022年1月現在)ですので、ほとんど同じ値段で使用できることがわかります。
ジェネリック医薬品については、現在発展途上国での使用に限られてはいますが、徐々に状況は変わってきたと言えるでしょう。
用法及び用量
1回800mg(4カプセル)を1日2回、5日間経口投与
感染症治療において重要なことは、「しっかりと飲み切る!」と言うことです。
感染症治療薬は飲み忘れや服用中断によって、薬が効きづらい耐性ウイルスが生じる可能性があります。
効果
入院(+死亡)のリスクを30~50%低下させると言われています。
日本の入院率を考えるとその恩恵を受ける人の割合は少ないことも確かですが、副作用が少ない薬であるため、非常に使いやすい薬と言えます。
軽症・中等症患者に対しては、抗体カクテル療法(カシリビマブ/イムデミマブ)とモノクローナル抗体(ソトロビマブ)が使用できましたが、いずれも点滴での投与が必要でした。
点滴での投与は医療へのアクセスという点で非常にハードルが高い現状がありましたが、経口薬の登場で治療の選択肢が広がったことは間違いありません。
今後の展望
課題も多い新型コロナウイルス感染症の治療薬ですが、徐々にその選択肢が増えてきました。
治療薬の進歩で新型コロナウイルスに感染しても怖くない! そんな未来を期待していきたいと思います。