ビジネスの場では「ロジカルシンキング」という言葉がよく用いられます。
簡単に言うと「論理的な考え方」「筋の通った考え方」のことですが、何か物事を伝えるときにも論理的に話さないと「あれっ?この人何を言っているんだろう?」と思われてしまいます。
今回はこの「ロジカルシンキング」を用いて、抗菌薬の適正使用をどう進めていくのか? 考えていきたいと思います。
伝わりにくい(ロジカルでない)話し方とは?
人間は無意識に受診・発信する情報にフィルターを掛けてしまっています。
そのフィルターは大きく3つ(省略・歪曲・一般化)に分類でき、コミュニケーションを阻害する要因とされています。
普段、こんな風に話をしていることはないでしょうか?
先生!血培お願いします。
1回、客観的に考えてみてください。
圧倒的に情報が不足していますよね?
医師だったらわかるだろうと勝手に思い込んで、伝えるべき情報を「省略」してしまっています。
それが「なぜ必要なのか?」そこをしっかりと説明しないと誤解される可能性もありますし、お互いが納得して治療を進めていくことは難しいと思います。
電話するのは迷惑だからやめておこう。
こういったこともないでしょうか?
確かにそれが正しい場合もあります。
ただ、本来やるべきこと(事実)に別の理由をつけて「歪曲」してしまっています。
これでは、適正使用を推進していける訳がありません。
血培取るのは必要だと思います。
(みんなが言っています。)
思う? 誰が? どうして?
これだと、自分の意見があたかも全て正しい情報であるかのように「一般化」してしまっています。
主治医には主治医なりの考え方があるんです。
事実は事実として伝え、その上で意見をしっかり伝えられるよう「事実と意見を分ける」ことが重要です。
対策は「評価の軸」を明確にする!
適正使用を推進していくときに、ただやみくもに進めて(伝えて)いっていないでしょうか?
適正使用を推進していく前に、自施設における「課題は何」なのかを確認して、「事実 → 課題 → 対策」のセットで考えていくことが重要です。
対策は「評価の軸」を明確にして決めていくことで効果的な介入を行っていくことが可能になります。
また、主治医には主治医なりの考え方があるため、評価の軸をしっかり決めておくことで、意見が合わないときも話し合って解消していくことができます。
適正使用推進のための評価項目(一例)
- 「抗菌薬の選択」は適切か?
- 「抗菌薬の用法・用量」は適切か?
- 「微生物検査・血液検査・画像検査等の実施状況」は適切か?
- 「微生物検査等の治療方針への活用状況」は適切か?
それぞれに対して「どう評価していくのか?」を明確にしていくことで、評価を受ける側も「何を確認していけばいいのか?」を考えるようになり、結果的に適正使用推進につながるということです。
それが可能となるシステム作りも大切ですね。
以上を踏まえた上でどう適正使用を推奨していくか考えてみます。
ちなみに今回は「微生物検査の実施状況」は適切か? ということに絞ってお話しています。
先生!
適正使用推進の一環で、抗菌薬の使い方を確認させていただきました。
そうしたところ、血液培養が取られていないみたいなんです。
確かに市中肺炎に対する血液培養陽性化率は多く見積もっても3割程しかないかもしれません。
でも、10人に3人起炎菌がわかるならそれだけで意味はあると思っていて、広域抗菌薬の使用を削減するためにも必要と考えているんですよね。
もちろん私たちは呼吸器の専門家ではないので、先生の経験っていうのも大切にしたいと思っています。
どうでしょう。
今からでも検査お願いできないでしょうか?
症状も安定しているようなので、セフトリアキソン(CTRX)にデ・エスカレーションするっていうのも一つの方法とは考えています。
ご検討いただけないでしょうか?
どうでしょう?
「省略」せずにしっかり説明できていますね。
事実に対してしっかりと向き合い「歪曲」もしていません。
「一般化」もせずに事実(データ)に基づいて論じることができています。
さいごに
今回は、ロジカルな伝え方について考えていきました。
「省略」「歪曲」「一般化」の3つを意識してどう伝えていくかを考えていくことで、より良いコミュニケーションを築いていくことができます。
誰だって、わかりやすく伝えたいですよね。
今回の記事が少しでも役に立っていただければ嬉しく思います。