インフルエンザの治療薬まとめ

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新型コロナウイルス感染症の流行で、幸か不幸か感染対策に対する意識(マスクや手指消毒)が広く浸透してきました。
その影響からか、2020年・2021年シーズンは全くいないと言っていい程、インフルエンザの患者さんが少なくなりました。
とは言え、いなくなった訳ではありません。
いつか来る流行に備え、抗インフルエンザ薬についてまとめましたので参考にしていただければ嬉しく思います。

インフルエンザ治療薬

治療薬は必要なのか?

インフルエンザに罹った時、抗インフルエンザ薬は必要でしょうか?
決してそういう訳ではありません。
インフルエンザはほっといても自然治癒する病気です。
では、なぜ抗インフルエンザ薬を使用するのでしょうか。

  • 解熱までの時間を1日短縮することができる。
  • その他症状に関しても2~3日短縮することができる。
  • 家族内感染等の伝播を抑制することができるかもしれない。
  • 心筋梗塞等の合併症発症頻度を抑制することができるかもしれない。
  • 抗菌薬(肺炎合併)の使用を1/3に減少することができる?

と、言われています。
熱が早く下がるなら使いたいって人も多いのではないでしょうか。
一方で、薬には必ず副作用も存在します。
絶対にどっちがいいというのはありません。
しっかり説明を聞いて判断いただければと思います。

どの薬を選択すればいいのか?

投与可能な剤形を選べばそれでいい!
(飲めれば経口、吸えれば吸入も可、無理なら点滴)

  • 重症例での治療経験はオセルタミビルが最も多い。
  • 重症や肺炎合併の患者(吸入困難)では、吸入薬を避ける。
  • 経口や吸入が困難な場合、確実投与が求められる場合は注射剤を考慮する。

治療薬の用法・用量は?

内服薬(飲み薬)

オセルタミビル
(タミフル)
成人及び体重37.5kg以上の小児
1回75mg・1日2回・5日間

幼小児(用時懸濁)
2mg/kg・1日2回・5日間

新生児、乳児(用時懸濁)
3mg/kg・1日2回・5日間
バロキサビル
(ゾフルーザ)
成人及び12歳以上の小児
1回40mg・単回投与

体重80kg以上の患者
1回80mg・単回投与

12歳未満の小児
体重40kg以上:1回40mg・単回投与
体重20kg~40kg:1回20mg・単回投与
体重10kg~20kg:1回10mg・単回投与

バロキサビルは2018年に発売された最も新しい抗インフルエンザ薬です。
非常に高い効果が期待できる反面、オセルタミビルと比べると使用経験が少ないため、予期せぬ副作用が起こる可能性もあります。
また、予防投与にも適応がありません。
薬が効きづらい耐性ウイルスの出現を抑えるためにも、他の抗インフルエンザ薬が使用できない場合など、必要な時にのみ使用して欲しい薬です。

吸入薬

ザナミビル
(リレンザ)
1回10mg・1日2回・5日間
ラニナミビル
(イナビル)
「吸入粉末剤」
成人及び10歳以上の小児
単回投与:1回2容器
2日間投与:1回1容器

10歳未満の小児
1回1容器

「吸入懸濁用」
160mgを生理食塩水2mLで懸濁
ネブライザーを用いて単回吸入

吸入薬は1回きりの製剤(ラニナミビル)と5日間連日使用する製剤(ザナミビル)があります。
ちゃんと吸えたかどうか不安を感じる方は、失敗しても何度も吸うチャンスがあるザナミビルを選びましょう。
吸入薬は成分に牛乳を含むためアレルギーを持つ方は使用を控える必要があります。
(牛乳で下痢になる乳糖不耐症とは別です。)

注射薬(点滴静注)

ペラミビル
(ラピアクタ)
成人
300mg(15分以上かけて)単回投与
重症:1日1回600mg・連日反復投与可

小児
10mg/kg(15分以上かけて)単回投与
重症:1日1回600mg・連日反復投与可

注射だから効果が高いということはありません。
意識障害などで経口や吸入が困難な場合などに考慮しましょう。

タミフルと異常行動に関して

小児や未成年者において、薬の服用有無に関わらず異常行動などの精神・神経症状が発現することが知られています。
これは高熱(熱性せん妄)によるものと考えられ、タミフルとの因果関係は否定(明確ではない)されました。
一時期は10代未成年での使用を原則中止していましたが、2018年に解除され、どの年齢でも使用できるようになっています。
ただ、それでも心配という方は、局所的な作用が期待できる吸入薬を選択するのも一つの方法だと思います。

ここで注意しなければいけないのが、タミフルを服用しないとしても、発熱後(24時間~48時間以内)は異常行動を起こす可能性があるということです。
10代未成年がインフルエンザに罹患した時には、部屋のドアや窓を施錠するなどの事故防止対策を行うよう注意しましょう。

抗インフルエンザ薬で大事なこと

感染症治療において重要なことは、「しっかりと飲み切る!」と言うことです。
飲み忘れや服用中断によって、薬が効きづらい耐性ウイルスが生じないようご協力お願いします。

さいごに

今回はインフルエンザの治療薬についてお話しさせていただきました。
今は全くと言っていいほど少なくなったインフルエンザですが、視点を変えると「インフルエンザに免疫を持っている人が少なくなった」ということでもあります。
いつか来る流行に備え、今一度見直していただけたら嬉しく思います。