免疫抑制薬使用中にワクチンは打てるの?

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先日こんな質問がありました。

ステロイドを使っているんですけど、ワクチンって打って大丈夫ですか?

ステロイドや免疫抑制薬使用中にワクチンを打っても、免疫がつかないのではないか?という質問です。
今回は免疫抑制薬とワクチンの関係について考えていきたいと思います。

それでもワクチンは打った方がいい!

免疫抑制使用中はワクチンを打うつと免疫がつきにくいという事実は確かにあります。
では、ワクチンを打っても意味がないのでしょうか?
決してそうではありません!

免疫抑制薬を使用しているということは、なんらかの基礎疾患を有していることを考えていかなければいけません。
「膠原病」や「がん」などその背景は様々と思いますが、確実に言えるのは「重症化のリスクが高い」ということです。
ワクチンを打つことによって少しでも免疫がつくのならば、そのメリットはあると言えるのではないでしょうか?

むしろそういった背景を持つ人ほどワクチンを打った方が良いと言えますね。

例)リツキシマブの場合

抗がん剤や免疫抑制剤などとして様々な疾患の治療に使用されるリツキシマブですが、抗体産生をつかさどるB細胞(液性免疫)を枯渇させるため、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンでは抗体産生が減少することが知られています。

そのため、リツキシマブ投与の約4週間前~約6週間後はワクチン接種を避けることが推奨されています。

ただ、実際に間隔をあけることは可能なのか?

ということは考えていかなければいけません。
実際には、原疾患の治療を止めるということが難しい場合が多いです。
だからと言って、ワクチンの接種を後回しにしてしまえば、感染のリスクも高まります。
そのため、現在の原疾患の状態ワクチン接種による影響を総合的に評価していくことが必要となります。

スケジュールを確認する!

ここまではワクチンを打った方が良いよね!という話。
これとは別に、避けておいた方が良い時期と言うのも存在します。

ワクチンの副作用発現時期を考える!

ワクチンを接種した後は、熱や倦怠感などの副作用が発現する可能性があります。
熱が出ていたら治療(月1回の抗がん剤・リウマチ注射など)が延期になっちゃいますよね。
副作用発現時期に大事な治療がバッティングしないよう注意しましょう。

基礎疾患を有する人は治験から除外されているケースも多く、予期せぬ副作用が発現するリスクもあります。

併用薬の副作用発現時期を考える!

同様の理由で原疾患の治療に使用されている薬の副作用が強く発現する時期は避けてスケジュールを考えるよう注意しましょう。

抗がん剤(細胞傷害性抗腫瘍薬)は要注意!

基本的にはいつでも良いとされていますが、下記の時期は避けた方が良いと言われています。

  • 抗がん剤の投与前後(制吐目的のステロイドによるワクチンの効果減弱)
  • 白血球が減少する時期(ワクチンの効果減弱)
  • 血小板が減少する時期(血種のリスク)

連日投与の抗がん剤や免疫抑制薬は?

連日投与であれば、基本的に治療は中断できません。
そのため、タイミングや用量を調節することは不要とされています。

もし治療延期が可能なら避けた方が望ましい時期

国内では明確な指針やガイドラインが示されていないのが現状で、アメリカリウマチ学会などの情報を元に記載しています。
使用にあたっては、かかりつけの医師に相談するようにしましょう。

  • 免疫抑制薬開始前2週間(タクロリムス・シクロスポリンは投与前1週間)
  • シクロフォスファミド(エンドキサン)投与前1週間1週間
  • モノクローナル抗体投与後90日間
  • ミコフェノレイト(セルセプト)投与前1週間
  • メトトレキサート(リウマトレックス)投与前1週間
  • Jak阻害薬(ゼルヤンツ、オルミエント、リンヴォック)投与前1週間
  • アバタセプト(オレンシア)皮下注 投与前後1週間
  • アバタセプト(オレンシア)点滴静注 1週間前~4週間後
  • 鎮痛解熱薬(カロナール、イブプロフェン、ロキソニン、ボルタレンなど)投与後24時間
  • 造血幹細胞移植後3(6)カ月

生ワクチンの場合は?

生ワクチンの場合、それ自体が弱い病原性を有するため、少し注意が必要です。
添付文書上では一律、免疫不全症に準じて禁忌とされています。
免疫不全状態か否かという判断が必要となりますので、かかりつけの医師に相談するようにしましょう。

感染対策はやっぱり大事!

感染症はワクチンによってある程度予防できるものもありますが、リスクがゼロになる訳ではありません。
感染症に罹らないためには、基本的な感染対策も合わせて必要です。

「標準予防策」はこちら

さいごに

今回は免疫抑制薬とワクチンとの関係についてお話させていただきました。
ワクチンによって防ぐことができる感染症がたくさんあります!
患者さんの状態と感染症のリスク等を総合的に評価をして、安全安心の医療を提供できるよう取り組んでいただければと思います。

「ワクチンの接種間隔」はこちら

「ワクチンって筋注? 皮下注?」はこちら