乾燥して喉や鼻の粘膜が乾燥すると、繊毛と呼ばれる異物を排除する細かい毛の動きが鈍くなり、細菌やウイルスを排除しにくくなります。
湿度が低いとインフルエンザウイルスの生存率が上がることも報告されており、厚生労働省のホームページでも「乾燥しやすい室内では、加湿器などを使って適切な湿度(50~60%)を保つことが効果的」と記載されています。
では、なぜ病院には加湿器を置いていないことが多いのでしょうか?
その理由について考えていきたいと思います。
加湿器は細菌やカビの温床となる!
めちゃくちゃキレイに管理されていれば問題ありません。
ただ、実際に加湿器を無菌的に管理していくことは実現可能でしょうか?
答えは「No」です。
要するに、管理されていない加湿器は菌をばら撒く機械になり得るということです。
健康な人であれば問題となりませんが、病院では免疫が低下した方がたくさん入院しています。
実際に加湿器が原因とされる院内感染が報告(1996年 東京、2000年 広島)されており、以降管理が難しい加湿器は病院に置かれなくなりました。
管理が難しいという同様の理由で、病院には水槽や植物が置かれていないことが多いです。
問題となる微生物は?
レジオネラ
加湿器で問題となる微生物として一番有名なのがレジオネラです。
よく温泉施設で集団発生するあれです。
グラム陰性桿菌で、レジオネラ自体は自然界に広く生息しています。
呼吸器症状を主とするレジオネラ症(第4類感染症)を発症し、ポンティアック熱と呼ばれる症状が有名です。
発生した場合は、設備の清掃と消毒が必要で、熱水消毒や月1回以上の塩素消毒が有効となります。
水回りの細菌
水回りは菌の温床となります。
院内感染の原因となりうる水回りの細菌としては「大腸菌」や「緑膿菌」「セラチア」「アシネトバクター」が有名ですね。
例えば、石鹸ボトルの底面に「赤い汚れ」を見たことないでしょうか?
あれは細菌が汚れを栄養に繁殖したもので、そこからは「セラチア」が分離されることが多いです。
他にも、しっかり浴槽を掃除していないとヌメヌメしてきますよね。
「ヌメリ」は汚れを栄養に繁殖した細菌が「バイオフィルム(生物膜)」を形成していることに由来します。
このように、水回りには様々な微生物が増殖します。
使うならスチーム式(加熱式)を!
以上の理由から免役が低下している方のそばでは、加湿器を使用することは推奨されていません。
ただ、どうしても使いたいという方もいらっしゃると思います。
その場合は、熱による消毒が可能なスチーム式(加熱式)の加湿器を選ぶようにしましょう。
もちろんこまめな清掃も重要で、火事にならないよう管理することも必要です。
超音波式
家庭用の加湿器で一番人気のある超音波式の加湿器ですが、エアロゾル(空気中に漂う小さな粒子)を発生させます。
エアロゾルと聞くと、新型コロナウイルスを想像する方も多いのではないでしょうか?
エアロゾルは微生物を運ぶ媒体となりますので、免役が低下している方のそばでは使用しないようにしましょう。
気化式
気化式はフィルターなどの清掃が難しいことが多いです。
加湿器の中で微生物を育てているようなものなので、免役が低下している方のそばでは使用しないようにしましょう。
さいごに
今回は病院に加湿器を置かない理由についてお話しさせていただきました。
病院で働いていると、実際に患者さんやご家族から加湿器を置いていいか聞かれることも多いです。
個人が使用している家庭用のものであれば、清掃などの管理が行き届いていないことも多く、キレイということを担保することは困難です。
個室であれば許容の範囲内ですが、大部屋での使用は避けるべきです。
しっかりと説明できるように見返していただければ幸いです。