B型肝炎の治療薬について

ウイルス
  1. ホーム
  2. ウイルス
  3. B型肝炎の治療薬について

世界でB型肝炎のウイルスに感染している人は約20億人、B型肝炎の罹患(発症)者は約5億人いるとされており、日本におけるB型肝炎ウイルスのキャリア(持続感染)も50~80歳代で1%以上と高い現状があります。
今回はそんなB型肝炎について振り返っていきましょう。

B型肝炎とは?

B型肝炎ウイルスが血液を介して感染(伝播)することによって引き起こされる肝臓の病気です。
B型肝炎ウイルスに感染してもほとんどは無症状で自然治癒しますが、一部では生命を維持できないほどの炎症(劇症肝炎)を引き起こします。
慢性的に肝炎が持続すると肝硬変、さらには肝がんへと進展する可能性があり、進展を抑制するための治療が有効です。

治療法

肝庇護薬

肝庇護薬とは、直接ウイルスを排除するのではなく、肝炎の沈静化を目的として、肝臓の機能を正常化することで症状の進行を抑える薬です。

  • グリチルリチン製剤(強力ネオミノファーゲンC)
  • ウルソデオキシコール酸(ウルソ)
  • 小柴胡湯  など

抗ウイルス薬

核酸アナログ製剤と呼ばれる直接B型肝炎ウイルスの増殖を抑制する薬です。
非常に高い効果が期待できますが、ウイルスを完全に排除することは困難なため、長期間飲み続ける必要があります。

核酸アナログ製剤の変遷

  • 2000年 ラミブジン(ゼフィックス)
  • 2004年 アデホビル(ヘプセラ)
  • 2006年 エンテカビル(バラクルード)
  • 2014年 テノホビル(テノゼット)
  • 2017年 テノホビル アラフェナミド(ベムリディ)

比較表

一般名エンテカビル(ETV)テノホビル アラフェナミド(TAF)
商品名バラクルードベムリディ
薬価
2022年1月現在
711.9円(先発)
131.9円(後発)
968.4円
服用方法1日1回1錠
CCr<50mL/minで用量調節
1日1回1錠
CCr<15mL/minで投与中止
服用時間空腹時(食事前後2時間避ける)いつでも
副作用頭痛、疲労、めまい、悪心、腎機能障害 など悪心、腹痛、頭痛、腎機能障害、骨密度低下 など
特徴一番多く使用 (使用経験多い)非常に高い抗ウイルス効果
耐性に強い

大事なこと

核酸アナログ製剤を服用していく上で大事なことは「飲み忘れをしないこと」です。
薬を飲み忘れたり治療を中断すると、薬の血中濃度が低下し、薬が効きづらい耐性ウイルスが生じる可能性があります。
用法・用量を守って、確実な服用を目指していきましょう。

インターフェロン

抗ウイルス薬で改善しない場合、インターフェロンによる治療が行われることがあります。
免疫系や炎症の調節などに作用して効果を発揮する薬剤で、根治の可能性がある治療法ではありますが、約3割の人にしか効果が期待できません。
また、副作用(発熱や頭痛、筋肉痛、脱毛、めまい、不眠など) が多く、軽度の肝炎で35歳程度までの人が対象ということにも注意が必要です。

インターフェロンの変遷

  • 1988年 インターフェロンの4週間治療
  • 2002年 インターフェロンの24週間治療
  • 2011年 ペグ・インターフェロンの48週間治療

抗がん剤投与前に抗原・抗体検査を!

血液悪性疾患に対する強力な免疫抑制や化学療法(抗がん剤)投与中に潜伏していたB型肝炎ウイルスが再活性化してB型肝炎を発症し、劇症化することがあります。
特に抗がん剤投与前に抗原・抗体検査を行い、B型肝炎ウイルスのキャリア(持続感染)・既感染の結果に応じて核酸アナログ製剤を内服していくことが必要です。
日本肝臓学会のホームページでは「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン」が公開されているので参考にしてください。

予防(ワクチン)

2016年に1歳未満の小児に対するワクチンが定期接種化されたとは言え、それ以上の年齢層における日本人のワクチン接種率は数%と低い現状があります。
世界におけるワクチン接種率は80%を超えており、生活の厳しい北朝鮮でも接取率は95%以上と言われています。

B型肝炎ワクチンを接種することで、急性肝炎を予防できるだけでなく、キャリア(持続感染)になることも予防でき、周囲への感染も予防することができます。
医療従事者など、血液や体液に接する可能性のある職種の人は受けるようにしましょう。

「ワクチンの接種間隔」についてはこちら

さいごに

今回はB型肝炎に使用される薬を中心にお話しさせていただきました。
日本肝臓学会のホームページでは「B型肝炎治療ガイドライン」が公開されていますので、実際に診療にあたる際にはそちらも参考にしてください。

B型肝炎ウイルスは血液を介して感染が伝播するため、インスリンの針などを刺してしまった場合には相応の対応が必要になります。
「針刺し事故時の対応」についてはこちら