A型肝炎って

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A型肝炎と聞いて何を思い浮かべますか?
A型肝炎は、特に若い方に注意して欲しい病気で、毎年数百人の患者が発生しています。
今回はそんなA型肝炎についてお話していきたいと思います。

A型肝炎の感染経路は?

まずは、A型肝炎は「感染症」だという話からしていきたいと思います。

A型肝炎は、A型肝炎ウイルスと呼ばれるウイルスが伝播して引き起こされます。
では、A型肝炎ウイルスはどこにいるのでしょうか?

このウイルスの特徴は、感染した人の糞便中にたくさん含まれているということです。
それを経口摂取することで引き起こされます。

いやいや! 人の便なんて触る訳ないじゃん!

と思った方も多いのではないでしょうか?
では、どういった時に経口感染(糞便感染)が成り立ってしまうか、考えてみましょう。

発展途上国の屋台は要注意!

発展途上国の衛生環境が劣悪な地域では、A型肝炎ウイルスに感染するリスクは非常に高いと言えます。

どういうことかと言うと、A型肝炎ウイルスに感染した人が川で便をしたとします。
日本のように下水処理が整備されている地域であれば問題ありませんが、発展途上国ではそうはいきません。
その川では日常的に洗濯であったり、食器の洗浄が行われていました。
するとどうでしょう?
特に屋台では、水質資源が限られているため、川などの不衛生な水を用いて食器が洗われていることも珍しくありません。
当然その水にはA型肝炎ウイルスが含まれているため、感染が成立して肝炎を発症してしまうという仕組みです。

周りの人も食べているから大丈夫でしょ?

そうではないんです!
現地の人に関しては繰り返しウイルスによる暴露を受けているため、免疫を獲得して問題とならないことが多いです。
ただ、日本人はそういった免疫は皆無と言えますので、滞在が長期になればなるほどリスクと言えます。

つまり、発展途上国の衛生環境が劣悪な地域では、生水や加熱処理が不十分な食品も含め、このお店あやしいなって思ったら、避けることが大事です。

コロナ流行前の旅行に気軽に行ける頃、病院にはA型肝炎で入院している若い方がよくいらっしゃいました。
特に多いのが、毎年4~6月頃で、卒業旅行中に感染して約1か月後に発症、AST・ASTが4桁以上に上昇して即入院という方々です。

国内においては性感染症の側面も!

ここまでは、衛生環境の問題から感染が成立してしまうという話でしたが、日本においてはそういったリスクが非常に低いことは間違いありません。
では、どういった経路で感染が成立してしまうのでしょうか?

国内においては、オーラルセックス(口腔性交)による感染が多いと言われています。
オーラルセックスとしては、淋菌やクラミジア、ヘルペス、梅毒が有名ですが、A型肝炎もそういった性的思考性を持つ方が感染し易いという事実があります。
直接肛門に顔を突っ込むわけですから、当然と言えば当然なんですけどね。

感染症で怖いのが、症状はなくても排菌していたら、他の人に伝播させてしまう可能性があるということです。
不特定多数の人との関係や持ったり、そういった行為を行う時には、A型肝炎のリスクがあるということを頭に入れておきましょう。

予防できる? トラベラーズワクチンのお話

先ほど、現地の人は既に免疫を持っているから問題とならないことが多いというお話をさせていただきました。
その免疫を人工的に作ってしまおうというのが「ワクチン」です。
A型肝炎ワクチンは、旅行に行く前に打つワクチンとしても有名で、「トラベラーズワクチン」と呼ばれたりもします。

トラベラーズワクチンの話はまた後日しようと思っていますが、国によってはワクチンを打っていないと入国できなかったり(黄熱ワクチン)、留学が拒否されたりすることもある(麻疹ワクチンなど)ので、海外に行く際には、是非一度確認いただきたいワクチンです。

A型肝炎ワクチン(エイムゲン)

日本で広く接種可能なA型肝炎ワクチンはエイムゲンです。
ワクチンはしばしば供給不足から輸入ワクチンが使用されることがありますが、本記事では基本的な国産ワクチンであるエイムゲンを例にお話していきたいと思います。

接種スケジュール

2~4週間間隔で2回、初回接種後24週を経過した後にもう1回追加接種する。

ここで重要なのが、3回の接種には約半年かかるという点です。
ワクチンは接種してすぐに抗体がつくわけではありません。
A型肝炎ワクチンについては、最悪直前1回の接種でもある程度の効果が得られることが言われていますが、海外に行く予定と照らし合わせ、余裕をもって接種するようにしましょう。

筋注が可能!

A型肝炎ワクチンは、添付文書上でも「筋肉内又は皮下に接種する」と記載されており、筋肉注射が可能な製剤となっています。

A型肝炎においても、皮下注よりも筋注の方が抗体価のつきが良好であることが報告されています。

基礎と臨床 1993;27:237-244.

「ワクチンって筋注? 皮下注?」はこちら

発症してしまったら?

A型肝炎ウイルスに感染してから発症するまでに約1か月ほどの期間を要すると言われています。
発症すると1~2週間、発熱や倦怠感、吐き気、嘔吐、黄疸などの症状が発現しますが、基本的には自然治癒し慢性化しません
まれに劇症化するため、そういった時には注意が必要です。
A型肝炎ウイルス自体には治療薬がありませんので、人工肝補助療法などの対症療法にて治療を行っていくこととなります。

さいごに

今回はA型肝炎についてお話させていただきました。
A型肝炎はワクチンにより予防ができる感染症です。
海外旅行、特に発展途上国に長期滞在する方は、是非トラベラーズワクチンを接種するようにしましょう。
この記事が、トラベラーズワクチンを接種するきっかけとなれば嬉しく思います。