グラム染色を有効活用できていますか?
起炎菌を推測せず、のんびり培養結果を待っていないですか?
感染臓器ごとに起炎菌となりうる細菌はある程度決まっています。
患者の背景(病歴、身体所見、検査所見など)から原因微生物を予測し、グラム染色で細菌を形態学的に観察することで、より正確な診断が可能となります。
今回はそんなグラム染色についておさらいしていきたいと思います。
グラム陽性菌とグラム陰性菌の違い
グラム染色の話をする前に、細胞表層の違いを理解しておく必要があります。
グラム陽性菌 | グラム陰性菌 | |
グラム染色 | 青紫色 | 赤色 |
細胞壁 | 厚い | 薄い |
タイコ酸 | + | ー |
外膜 | ー | + |
リポ多糖体(LPS) | ー | + |
リポ蛋白(LPR) | ー | + |
この細胞壁の構造が異なることを利用して、細菌を染め分ける方法のことをグラム染色と呼びます。
細胞壁が「厚い」グラム陽性菌は青紫色(クリスタルバイオレット)に染まり、「薄い」グラム陰性菌は染まりにくく(脱色され)赤色(サフラニン)に染まります。
医療関連の感染を引き起こす細菌一覧
グラム陽性球菌
黄色ブドウ球菌 | Staphylococcus aureus |
表皮ブドウ球菌 | Staphylococcus epidermidis |
化膿レンサ球菌 | Pneumococcus pyogenes |
肺炎球菌 | Pneumococcus pneumoniae |
腸球菌 | Enterococcus faecalis, E. faecium |
グラム陽性桿菌
ジフテリア菌 | Corynebacterium diphtheriae |
セレウス菌 | Bacillus cereus |
ディフィシル菌 | Clostridium difficile |
リステリア菌 | Listeria monocytogenes |
結核菌 | Mycobacterium tuberculosis |
グラム陰性球菌
淋菌 | Neisseria gonorrhoeae |
髄膜炎菌 | Neisseria meningitidis |
グラム陰性桿菌
アシネトバクター・バウマニ | Acinetobacter baumannii |
インフルエンザ菌 | Haemophilus influenzae |
エンテロバクター | Enterobacter spp. |
セパシア | Burkholderia cepacia |
セラチア | Serratia marcescens |
ピロリ菌 | Helicobacter pylori |
マルトフィリア | Stenotrophomonas maltophilia |
レジオネラ | Legionella pneumophila |
大腸菌 | Escherichia coli |
肺炎桿菌 | Klebsiella pneumoniae |
緑膿菌 | Pseudomonas aeruginosa |
やっぱり連携が大事!
よく学会に行くと「医師や薬剤師もグラム染色できた方がいい!」ということを耳にします。
果たして本当にそうでしょうか?
「餅は餅屋」「検査は臨床検査技師」
臨床検査技師がいない状況では、自分で行わざる得ない時もあるでしょう。
ただ、毎日毎日検体を見ている臨床検査技師にはどうあがいてもかなわないですよね!?
しっかりと連携を取って検査は臨床検査技師に任せるということも大切です。
予め、患者の背景から予測される原因微生物の情報を伝えていくことでより正確な特定が可能となりますので、結果だけでなく検査の前段階から連携していくことも有効です。
さいごに
グラム染色は「臨床に即した検査」であり、感染症診療において「なくてはならないツール」であることは間違いありません。
グラム染色を有効に活用して、より適した治療を行っていけるよう取り組んでいきましょう。