血管内留置カテーテルは医療現場で汎用される処置である一方で、感染を引き起こすリスクとなります。
今回は、そんなカテーテル関連血流感染症(CRBSI)をどう治療していくのか考えていきたいと思います。
カテーテル関連血流感染症とは?
薬液注入や体液排出を目的に留置される細い管(チューブ・ドレーン・カテーテル)のうち、血管内と尿路に留置されるものをカテーテルと呼びます。
血管内に留置されているカテーテルに細菌が定着(コロニーを形成)し血流感染に至ったものを「カテーテル関連血流感染症」と呼び、敗血症などの症状を呈します。
まずは血液培養を少なくとも2セット採取!
カテーテル関連血流感染症が疑われる場合、末梢血から1セット、カテーテルからもう1セットの血液培養を取るようにしましょう。
血管内留置カテーテルを抜去する際は、カテーテル先端の培養も行います。
可能なら抜去する!
感染症の基本は感染源を取り除いてあげることです。
カテーテルの抜去が可能なら、物理的に感染源を取り除いてあげることが大切で、抜去だけで解熱することも多いです。
カテーテルを温存して抗菌薬を開始しても、治療経過が乏しい場合(目安:72時間)は抜去(入れ替え)するようにしましょう。
原因微生物は?
血管留置カテーテルは直接皮膚に刺していくため、皮膚の常在菌が起炎菌として発症することが多いとされています。
- グラム陽性菌:表皮ブドウ球菌(CNS)や黄色ブドウ球菌(MRSA、MSSA)、腸球菌などが全体の6~9割を占めます。
- グラム陰性桿菌:免疫が低下した患者では、大腸菌や緑膿菌、クレブシエラなどが原因となることもあり、全体の1~2割を占めます。
- カンジダ属:真菌であるカンジダ属が全体の1割を占め、好中球減少患者では特にリスクとなります。
予防も大切!
とにかく清潔操作を徹底することで、感染を予防することができます。
例えば、中心静脈カテーテル挿入時に「マキシマル・バリアプリコーション」と呼ばれる清潔操作を徹底することで、発症のリスクを軽減することができます。
- 清潔操作(手指衛生、皮膚消毒、無菌操作など)
- ドレッシング(カテーテル挿入部位を密封)
- 毎日の慎重な観察
- 適切なタイミングで末梢静脈カテーテルを交換
- 薬液の細菌汚染を防止
抗菌薬の選び方
患者の背景や施設のアンチバイオグラム(抗菌薬の感受性)を参考に抗菌薬を選択していきます。
グラム染色も頑張れば5分程度で染色可能ですので、その患者さんに合わせた抗菌薬を選択していくことが大切です。
グラム陽性菌は必ずカバーする!
まずは一番頻度の高いグラム陽性菌をカバーします。
医療関連感染では、耐性菌(MRSAなど)が高率で分離されるため、抗MRSA薬(腸球菌などもカバー可能)でエンピリック治療を行います。
感受性が判明したら、狭域スペクトルの抗菌薬にしっかりデ・エスカレーションすることも大切です。
DAP | 1回6mg/kg・1日1回 |
VCM | 1回1g(15mg/kg)・1日2回 初期投与量含め、薬物血中濃度モニタリング(TDM)により投与量を調製することが望ましい。 |
緑膿菌も含めたグラム陰性桿菌カバーを加える!
次に免疫低下などの背景に応じて、グラム陰性菌を
第四世代セフェム系抗菌薬(CFPMなど) |
TAZ/PIPC 1回4.5g・1日3回 |
MEPM 1回1g・1日3回 |
カンジダ属はリスクに応じてカバー!
カンジダ血症は非常に死亡率が高い(死亡率:3~6割)感染症です。
重症例(ショック、臓器障害の兆候など)や免疫低下が背景にある場合は、カンジダ属をカバーする必要があります。
一般的には「Candida albicans」が最も多く、次いで「C. glabrata(アゾール系:×)」分離されるが、皮膚に常在する「C. parapsilosis(キャンディン系:△)」などが起炎菌となる場合もありますので注意お願いします。
MCFG | 1回150mg・1日1回 |
CPFG | 初日 1回70mg・1日1回(ローディング) 2日目以降 1回50mg・1日1回 |
FLCZ | 1回400mg・1日1回 |
L-AMB | 1回2.5~5mg/kg・1日1回 |
抗菌薬の治療期間は?
原因微生物により治療期間が異なります。
患者の臨床状態に応じて柔軟に対応していきましょう。
- 表皮ブドウ球菌(CNS):5~7日
- 黄色ブドウ球菌:14~42日間
- 腸球菌:7~14日間
- グラム陰性桿菌:7~14日間
- カンジダ菌:血液培養陰性後14~21日間
- 血栓性静脈炎・心内膜炎:4~6週間
- 骨髄炎:6~8週間
さいごに
今回はカテーテル関連血流感染症についてお話させていただきました。
経口摂取が困難で、どうしても輸液による栄養管理が必要な場合は非常に頭を悩ませる感染症です。
その基本的な考え方について見直していただければ幸いです。