コンタクトレンズと感染症

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コンタクトレンズを使用していますか?
日本人の「10人に1人(約1,500万人)」はコンタクトレンズを使用していると言われています。
結構、多いですよね。
そんなコンタクトレンズで怖いのが「角膜感染症」です。
今回はコンタクトレンズと感染症について考えていきたいと思います。

コンタクトレンズと感染症

通常、角膜の上皮や常在菌、涙によって私たちの目は守られています。
そんなに簡単には感染は起こりません。
ただ、コンタクトレンズを使用すると、この角膜上皮を傷つけてしまう可能性があります。
まずは、不衛生なコンタクトレンズの使用を避け、しっかりとケアしていくことが大切です。

注意する微生物は?

コンタクトレンズは、水を使用して保管します。
そのため、緑膿菌やセラチアなどのグラム陰性桿菌(約70%)が起炎菌となることが多いと言われています。
ブドウ球菌やノカルジア、バチルスなどのグラム陽性菌(約20%)アカントアメーバフザリウムなどの真菌(<10%)も起炎菌となります。

Am J Ophthalmol. 2007;144:690-698.

使い捨てコンタクトレンズの場合は、少し違ったプロファイルを示します。
コンタクトレンズ自体は清潔であるため、結膜嚢の常在菌であるグラム陽性菌が起炎菌となります。

どんなタイプのコンタクトレンズを使用していたか、しっかりと問診する!

これが大切です。
患者背景や角膜所見、塗抹検鏡、培養検査などから起炎菌を推測していきます。

治療薬

治療の基本は目薬です。
推測した起炎菌に応じた抗菌薬が配合された目薬を選択していきます。
流涙が強い場合や小児などで投薬時に泣く場合など、眼軟膏を使用します。

軽症:1種類
重症:2種類(作用機序が異なるもの)
さらに重症(強い前房内炎症を伴うなど):点滴を併用

初期治療薬の例

グラム陰性桿菌疑い → フルオロキノロン系+アミノグリコシド系
グラム陽性球菌疑い → フルオロキノロン系+セフェム系

分類一般名代表的な商品名
セフェム系セフメノキシムベストロン点眼用
アミノグリコシド系ゲンタマイシン
トブラマイシン
ジベカシン
フラジオマイシン
ゲンタロール点眼液、リフタマイシン点眼液
トブラシン点眼液 0.3%
パニマイシン点眼液
リンデロンA液、ネオメドロールEE軟膏に含有
マクロライド系エリスロマイシンエコリシン点眼液,エコリシン眼軟膏
クロラムフェニコール系クロラムフェニコールオフサロン点眼液、コリナコール点眼液
フルオロキノロン系オフロキサシン
ノルフロキサシン
ロメフロキサシン
レボフロキサシン
トスフロキサシン
ガチフロキサシン
モキシフロキサシン
タリビッド点眼液・眼軟膏
ノフロ点眼液、バクシダール点眼液
ロメフロン点眼液
クラビット点眼液
オゼックス点眼液、トスフロ点眼液
ガチフロ点眼液
ベガモックス点眼液
ポリペプチド系コリスチンエコリシン点眼液,オフサロン点眼液に含有
グリコペプチド系バンコマイシンバンコマイシン眼軟膏

細菌を死滅できても白く濁ってしまうと大きな障害を残してしまいます。
そのため、消炎目的にステロイド点眼液が使用されることもありますが、確実に抗菌目薬が効いていることが大前提となります。

投与間隔(頻回点眼が必要な場合も!)

重症例あるいは刺激による流涙が顕著な場合、30分〜1時間ごとの点眼を行います。
アミノグリコシド系やフルオロキノロン系はPAE(持続的な抑制効果)を持つため、2〜3時間ごとの点眼でいいとされています。

副作用(アレルギーに注意!)

頻回点眼は副作用の発生率を高めます。
アレルギー性皮膚炎やアレルギー性眼瞼結膜炎、角膜上皮障害(特にアミノグリコシド系)に注意しましょう。

細菌以外の感染症の場合

稀に細菌以外の微生物が起炎菌となることがあります。
その中でも特に注意が必要なのがアカントアメーバで、重症角膜感染症を引き起こす可能性があります。
アカントアメーバでは治療のアプローチが細菌のものと全く異なります。
三者併用療法(病巣掻爬・点眼液・全身投与)と呼ばれる治療を行いますが、治療が困難になることが多いです。

日本眼科学会のホームページの「感染性角膜炎診療ガイドライン(第2版)」に詳しく記載されていますので、そちらも参考にしてください。

さいごに

今回はコンタクトレンズと感染症についてお話させていただきました。
良く見えるように使用していたコンタクトレンズで視力が落ちて(角膜混濁)しまったら嫌ですよね。
大事なことは、角膜感染症が起こらないようにしっかりとケアをするということです。
少しでも参考になれば嬉しく思います。