風邪の時に抗菌薬は欲しいですか?
風邪に抗菌薬はいらない理由についてまとめてみました。
風邪の時、抗菌薬を処方されたことはありますか?
風邪の時に抗菌薬を処方された経験は一度はあるのではないでしょうか?
以前行われた調査では、上気道炎(いわゆる風邪)の約60%の患者さんに対して抗菌薬が処方されていたことが報告されています。
※ 上気道炎:感冒、急性気管支炎、急性副鼻腔炎、急性咽頭炎(細菌性と同定されたものを除く)、急性咽喉頭炎、急性上気道感染症
第3世代セフェム系(46%)マクロライド系(27%)キノロン系(16%)
風邪の原因は?
上気道炎(いわゆる風邪) の80~90%以上はウイルスが原因であり、ほとんどは10~14日以内で自然に治癒し、治療の必要はないとされています。
抗菌薬は「細菌」をやっつける薬であり、「ウイルス」に対しては効果が期待できません!
抗菌薬の肺炎予防効果はどのくらいあるの?
抗菌薬の予防効果(上気道炎後の肺炎、咽頭炎後の咽後膿瘍、中耳炎後の乳突蜂巣炎)ですが、一人の肺炎を予防する効果を得るためには約4000人に抗菌薬を投与しなければいけないことが報告されています。(NNT 4000)
NNT(Number Needed to Treat):一人の治療効果を得るために必要な患者数
副作用という避けられない問題
4000人もの人に抗菌薬を投与するということは、同時に起こりうる副作用についても考えていく必要があります。
(例)セフェム系の抗菌薬を投与した場合に起こりうる副作用
- 皮疹(1~3%): 40~120人
- 下痢(1~19%): 40~760人
- アナフィラキシー: 0.4人
耐性菌発現抑制にも効果的
抗菌薬は唯一「環境に影響を与える薬剤」と言われています。
= 抗菌薬は使えば使うほど、その抗菌薬に抵抗性を示す耐性菌が出現する可能性がある。
そのため、不要な抗菌薬の使用を減らしていくことが、耐性菌発現の抑制に繋がります。
抗菌薬が必要な場合もある!
とは言え、一部の「ウイルス」感染では「細菌」による二次感染が起こる可能性があるのも事実です。
危険症候(Red Flag)
- 人生最悪の喉の痛み
- 開口障害
- 唾を飲み込めない(流涎)
- Tripod Position(三脚のような姿勢)
- 吸気性喘鳴(Stridor)
抗菌薬が必要な場面(Red Flag)に関する情報など、厚生労働省のホームページに治療指針「抗微生物薬適正使用の手引き」が公開されているので参考にしてください。
さいごに
今回は「風邪に抗菌薬はいらない理由」についてお話しさせていただきました。
抗菌薬が効かない耐性菌が増えないよう、適正使用にご協力お願いいたします。