カンジダ血症の治療薬は難しい?

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カンジダ血症は治療が複雑で難しいので、嫌煙されがちな感染症です。
どうしてかと言うと、菌種の違いを覚えなければいけない感染症だからです。
ただ、ポイントさえ押さえてしまえば難しいことはありません!
今回はそんなカンジダ血症の治療薬についてお話しさせていただきます。

カンジダ血症とは?

カンジダは、皮膚や消化管、上気道などに常在する酵母様真菌です。
通常は常在細菌叢によってカンジダの増殖は抑制されていますが、抗菌薬や免疫抑制剤などの使用によって免疫が破綻されると引き起こされる日和見感染症です。

カンジダ血症の疫学

医療関連の血流感染症として、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、腸球菌の次に多い血流関連症(5~10%)です。
喀痰や尿、便などからカンジダ属が検出されても、それ自体が治療の対象になることは稀ですが、血液からカンジダ属が検出されたら即治療が必要とされています。

菌種としては、「Candida albicans」が約50%と最も多く、「C. Glabrata」や「C. parapsilosis」が20%前後で、「C. Krusei」と「C. Tropicalis」が残りを占めます。
C. Glabrata」は腸管に多く常在し、腸管粘膜バリアーの破綻(腹部手術など)により引き起こされ、一般的に高齢者に多い菌種とされています。
C. parapsilosis」は皮膚に常在し、カテーテル関連血流感染症のリスクであり、小児において高率に分離されます。

治療薬

カンジダ血症を治療する上で最も大事なことは、菌種によって抗真菌薬への感受性が異なるということです。
そのため、非常に治療が複雑でわかりづらいのですが、近年「バンドル・マネジメント」と呼ばれるアプローチ方法が主流となりつつあります。

カンジダ血症のバンドル・マネジメント

治療開始時の実施項目

  • カンジダ血症診断後24時間以内に中心静脈カテーテル (CVC) 抜去
  • 適切な抗真菌薬の初期選択
  • 適切な抗真菌薬の投与量

治療開始後の実施項目

  • 眼科的精査(眼病変あれは3週間以上の治療が必要)
  • 血液培養陰性確認
  • 治療開始3~5日目に臨床効果を評価し、抗真菌薬変更を検討
  • 適切な第2選択薬の選択
  • 血液培養陰性化かつ臨床症状改善から最低2週間治療
  • 経口薬へのstep-down(血培陰性化後5~7日後にstep-down可能)

抗真菌薬の選択

抗真菌薬と菌種による感受性の違いと簡単にまとめるとこのようになります。

カンジダ血症の治療薬

こう見ると、ポリエンマクロライド系薬剤が最強のようにも見えます。
ポリエンマクロライド系薬剤は、ムコールなどの接合菌にも効果を示しますが、副作用(腎機能障害、低カリウム血症、血栓性静脈など)が強いため、使用は重症例などに限定されます。
また、真菌特有の細胞壁を標的とするキャンディン系薬剤は、高い安全性(選択毒性)が期待できますが、硝子体への移行が不良なため眼病変には適応となりません。
このように、特徴が各々異なりますので、その特性を理解して選択いただければと思います。

カンジダは検体の染色結果によって、ある程度菌種を特定できる可能性があるので、臨床検査技師とうまく連携していくことも大切です。

抗真菌薬の用法・用量

AMPH-B2.5~5.0mg/kg 1日1回 点滴静注
L-AMB0.5~1.0mg/kg 1日1回 点滴静注
5-FC1回25mg/kg 1日4回 経口投与
Ccr≦40ml/min:用量調節
FLCZ初日800mg (12mg/kg) 1日1回 点滴静注*
2日目以降400 mg(6mg/kg) 1日1回 点滴静注
(*FLCZの保険適応は400mg/日まで)
Ccr≦50ml/min:通常用量の半量
透析患者:透析終了後に通常用量
F-FLCZ最初2日間800mg (12mg/kg) 1日1回 静注
3日目以降400mg(6 mg/kg)1日1回 静注
Ccr≦50ml/min:通常用量の半量
透析患者:透析終了後に通常用量
VRCZ初日1回6mg/kg 1日2回 点滴静注
2日目以降1回3~4mg/kg 1日2回 点滴静注
Ccr<30mL/min:原則禁忌
日本人の約15~20%がCYP2C19のPoor Metabolizerと考えられることから、血中濃度をモニタリングすることが望ましい
ITCZ最初2日間1回200mg 1日2回 点滴静注
3日目以降200mg 1日1回 点滴静注
MCFG100mg 1日1回 点滴静注
CPFG初日70mg 1日1回 点滴静注
2日目以降50mg 1日1回 点滴静注

ガイドライン

日本医真菌学会から「侵襲性カンジダ症の診断・治療ガイドライン(2013年)」や「侵襲性カンジダ症に対するマネジメントのための臨床実践ガイドライン(2021年)」が公開されていますので、実際に診療にあたる際にはそちらも参考にしてください。

さいごに

今回はカンジダ血症の治療薬についてお話しさせていただきました。
菌種によって抗真菌薬への感受性が異なるため、非常にやっかいな菌であることは間違いありません。
でも、そのことさえ押さえてしまえばそんなに難しくはないですよね!?
少しでも診療の助けになれば嬉しく思います。