アンプルカットに消毒は本当に必要なのか?

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先日、看護師さんからこんな質問を受けました。

アンプルカットの時に消毒って本当に必要なの?

えっ!? って思いました。
アンプルカットの時にアルコール綿で消毒することは当たり前と思って行っていたので、聞かれて少しドキッとしました。
皆さんは、こう聞かれたときにしっかり説明できますか?
今回はそんなお話をさせていただきたいと思います。

なぜそんな質問をしたのか?

よく話を聞いてみると、質問の意図としてこういう風に考えていたそうです。

アンプルの外側は誰が触ったのかわからないから汚染されている可能性があることはわかります。
バイアルであれば、汚染されている可能性のあるゴム栓に直接針を刺すので、消毒をしなければいけないのもわかります。
アンプルの場合、汚染されている頸部に針が直接触れなければ、消毒しなくてもいいのではないか?

聞いて、なるほど!と思いました。
もちろん、アンプルの頸部に注射針やシリンジが触れてしまう可能性があるので、基本的にはアルコール消毒が推奨されています。
ただ、慣れたベテランの人が行うなら必要ないのではないかと言う疑問でした。

実は、この質問をしてきたのは、何年も医療安全や感染管理に携わってきた感染管理認定看護師(ICN)だったんです。

アンプルカットで生じる微粒子が問題!

アンプルの外側はどんな物質で汚染されている可能性があるのでしょうか?
アンプルカットで生じる微粒子はガラス片だけじゃないんです。

アンプルの外側は、誰が触ったかわからないですよね。
多少の違いはあるにしろ、細菌やウイルスなどの微生物によって汚染されています。
微生物が注射薬の中に混ざったらどうなるか? 想像に難しくないと思います。
汚染された注射薬によって、カテーテル関連血流感染症を代表をする様々な感染症を発症するリスクが生じます。
そのため、注射薬は可能な限り清潔な管理をしていく必要があります。

もう一つ、塵や埃といった微粒子が付着しているということも考えていかなければいけません。
注射薬は直接血管の中に入る薬のため、異物の侵入は可能な限り避けなくてはなりません。
アルコール綿による消毒は、清拭による拭き取り効果も得られます。
埃が入った薬を注射されたくはないですよね!

アンプルの中は陰圧って知っていました?

アンプルの製造工程を考えてみましょう。
薬剤が充填された後に、高熱を使ってアンプルを封入するため、内部は陰圧となっています。
陰圧ということは、アンプルカットを行った時に、空気と一緒に周りの微粒子も薬剤側に引き込んでしまうということです。
アンプルカットの技術の差によって微粒子の発生量は抑えることができますが、厳密にゼロにするということは困難なんです。

アルコール綿で消毒する!

まとめていきましょう。

アンプルに付着した微生物(細菌やウイルスなど)や微粒子(塵や埃など)の混入を防ぐために、アルコール綿による消毒は有効!

ということです。
実際にこのような論文も報告されています。

微粒子発生にについてのエタノール清拭の効果
(2mLガラスアンプルで10μm以上の粒子をカウント)

清拭なしの発生粒子数:162±81.8(32-378)
清拭ありの発生粒子数:29.4±14.9(4-77)

外科と代謝 2017;51:247-255.

この論文を見ると、発生する微粒子はこんなに違うんだとわかります。
注射薬は直接体の中に入る薬なので、可能な限り清潔に操作することを心がけていきましょう。

さいごに

普段当たり前に行っていることでも、聞かれるとドキッとすることがあります。
しっかり理解して行っていけるよう見直していただければと思います。

日常の疑問などがありましたら、「お問い合わせ」より受け付けています。
分かりやすく説明させていただきたいと思います。