オーグメンチン(アモキシシリン+クラブラン酸)
サワシリン(アモキシシリン)
こんな処方を見たことがありませんか?
感染症の領域では、よく使用される組み合わせです。
が、初めて見た時は何で同じ成分の薬を併用しているんだろうと疑問を持つ方も多いと思います。
今回は、この併用療法について考えていきたいと思います。
β-ラクタマーゼ阻害剤(クラブラン酸)を含む利点!
抗菌薬と一言で言っても、全ての細菌に効果を示すわけではありません。
細菌の中には「β-ラクタマーゼ」と呼ばれる酵素を産生することによって、抗菌薬を分解して抵抗力を示すものがいます。
「β-ラクタマーゼ」にもたくさんの種類がありますが、サワシリンを含むβ-ラクタム環を有するβ-ラクタム系抗菌薬(ペニシリン系やセファロスポリン系)の多くを分解してしまいます。
そんな「β-ラクタマーゼ」自体を阻害することで、抗菌薬の分解を防ぐことができるのが「β-ラクタマーゼ阻害剤(クラブラン酸)」であり、β-ラクタマーゼ産生の耐性菌に対する効果が期待できます。
β-ラクタマーゼを産生するのは起炎菌だけじゃない!
起炎菌とは別に耐性菌が共存(保菌)する場合、抗菌薬を分解してしまうことがあります。
そんな「間接的病原性」による効果も期待できます。
「オーグメンチン」の配合比率
「オーグメンチン」には、ペニシリン系抗菌薬である「アモキシシリン」と「クラブラン酸」が「1:2」の割合で配合されています。
これは、配合比率が「1:2」のときに最も抗菌作用が強くなると考えられているためです。
クラブラン酸の上限量に注意!
保険適応上、「オーグメンチン」には上限量が定められています。
「オーグメンチン配合錠250RS」の場合、1日4錠までしか保険適応が認められていません。
「アモキシシリン」だと1000mg、「クラブラン酸」だと500mgが上限量です。
それ以上では、「クラブラン酸」が過量となり、副作用のリスクが高まってしまいます。
「アモキシシリン」の量を増やしたい!
「オーグメンチン」では、上限1000mgまでしか投与が出来ない「アモキシシリン」ですが、それ以上の量を投与したい場面があります。
具体的には、市中肺炎や中耳炎、副鼻腔炎の場合、1日1500~2000mgの用量が必要となります。
そのような「アモキシシリン」の量を増やしたい場合に、この併用療法が使用されます。
オーグメンチン配合錠250RS 1回1錠・1日3回 (アモキシシリン750mg+クラブラン酸375mg) |
サワシリンカプセル250mg 1回1カプセル・1日3回 (アモキシシリン750mg) |
合計 アモキシシリン1500mg+クラブラン酸375mg |
より強力な治療が必要な場合は、1日4回とすることも可能です。
オーグメンチン配合錠250RS 1回1錠・1日4回 (アモキシシリン1000mg+クラブラン酸500mg) |
サワシリンカプセル250mg 1回1カプセル・1日4回 (アモキシシリン1000mg) |
合計 アモキシシリン2000mg+クラブラン酸500mg |
ちなみに「オーグメンチン」は「配合錠 125SS」と「配合錠 250RS」が発売されています。
「サワシリン」は「錠 250mg」と「カプセル 125mg・250mg」、「細粒 10%」の剤形があります。
小児用の「クラバモックス」は?
同じ薬(アモキシシリン+クラブラン酸)でも、小児用として発売されているのが「クラバモックス」です。
小児に対して「クラブラン酸」の量が多くなると副作用のリスクが生じます。
そのため、配合比率「1:14」に設計されています。
小児の肺炎球菌やインフルエンザ菌による感染症に対しては、「クラブラン酸」の量による効果の違いがないことが報告されています。
さいごに
今回はちょっと特殊な使い方をする抗菌薬についてお話をさせて頂きました。
耐性菌に使用可能な薬はすごく貴重です。
その使用方法について参考にしていただければ嬉しく思います。