空気の流れを意識しよう!(陽圧?陰圧?)

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咳をしている人の風下には行きたくないですよね?
それと同じで、病院の中では空調によって、感染症が周りに伝播しないように対策がとられています。
今回は病院の空調設備について考えていきたいと思います。

空気の流れを意識した差圧管理

空気の流れ(陽圧→等圧→陰圧)を意識する!

空気は圧力の高い方(陽圧)から低い方(陰圧)へと流れていきます。
この性質を利用して、病院の中では空気の流れを意識した差圧管理が行われています。
では、具体的にどのように管理されているのでしょうか?

清潔エリア・汚染エリアを考える!

清潔エリアを陽圧」に、「汚染エリアを陰圧」にすることで、汚染エリアから清潔エリアに空気が流れるのを防ぎ、清潔エリアにキレイな空気が保たれるように管理されています。
例えば病棟で一番清潔に保ちたいエリアはどこでしょうか?
それは、スタッフステーションです!
スタッフステーションを周りより少し陽圧にして空気が流入することを防ぐことで、より清潔に保つといった管理が病院の中では行われています。

陽圧管理が必要な場所は?

では、病院の中でより清潔(陽圧)に保ちたい場所はどこでしょうか?

埃や微生物を侵入させたくない場所

  • 免疫が低下した患者さんがいる病室(クリーンルーム)
  • ICUなどの重症患者さんがいる病室
  • 手術室
  • 無菌調剤室
  • 診察室

このような場所は、より清潔に保ちたいですよね!
周りより陽圧にすることで、汚染された空気が流入しないように管理されています。

陰圧管理が必要な場所は?

一方で、病院の中で汚染されている場所はどこか考えてみてください。

汚染物質や臭気を外に流出させたくない場所

  • 感染症病床
  • 汚物処理室
  • 便所(トイレ)
  • 細菌検査室
  • 霊安室
  • 乾燥室

病院でトイレの臭いってあまりしないですよね。
それはトイレが陰圧に保たれており、空気が周りに漏れないように管理されているからなんです。
逆に病室でお漏らししてしまうと、病棟中が臭くなります。

空気感染する感染症には要注意!

「結核」や「帯状疱疹」などの感染症は、空気を介して感染が伝播します。
空気を介して感染が伝播するということは、普通だったら周りの部屋や人にうつってしまいますよね。
そうならないために、空気感染予防策が必要な感染症を有する患者さんの部屋を陰圧にすることで、空気がその部屋の外に漏れないよう対策が取られます。

「空気感染予防策」はこちら

新型コロナウイルスの場合

基本的には飛沫により感染が伝播するとされていますが、空気感染と類似の感染様式を示す事例が数多く報告されており、咳やくしゃみ、会話のときに口や鼻から出る小さな粒子(エアロゾル)による感染も否定できないと言われています。
そのため、新型コロナウイルスに感染した患者さんが入院している「コロナ病棟」では、空気の流れを意識して病室を陰圧にするなどの空調管理を行うことが多いです。

空気の流れ:スタッフステーション(陽圧)→ 廊下(等圧)→ 病室(陰圧)

確実な管理を行うなら前室を!

確実な管理を行うためには、前室を設けることが必要となります。
前室においても単独の給排気を行い、「病室」「前室」「廊下」の間に圧力の差が生じるようにすることで、空気の流入(流出)を確実に防ぐことが可能になります。
ここで注意しなければいけないのは、前室のドア(病室側と廊下側)が同時に開かないようにすること、前室に入ってから反対側のドアを開けるまでに一定の時間を設けることです。
急いでいると、ついついすぐに反対側のドアを開けたくなっちゃいますよね。
周りに感染を広げないためにも、しっかりと時間を設けて出入りするようにしましょう。

各部屋の空調換気

各部屋毎に定められている最小風量の目安を示したいと思います。
一般病室の場合、1時間当たり6回、つまり10分に1回は空気が入れ替わるよう設定されているんです。

部屋(エリア)外気量(回/時間)全風量(回/時間)
手術室315
回復室26
集中治療室26
内視鏡室26
呼吸器内視鏡室212
一般病室26
隔離病室212
空気感染隔離病室212
病院設備設計ガイドライン(日本医療福祉設備協会)

さいごに

今回は、空調管理を用いた感染対策についてお話させていただきました。
感染管理にとって、空気の流れって結構大事なんです。
日々の生活においても空気の流れが感染管理につながるということを意識して、換気などを見直していただければと思います。