新型コロナウイルス感染症(軽~中等症)の治療薬で「入院リスクを5割減」といった情報をテレビとかで聞いたことはないでしょうか。
その時、治療薬についてどういった印象を受けましたか?
正しく解釈を行うためのヒントを記載しましたので、参考にしていただければ嬉しく思います。
入院リスク5割減の意味
入院のリスクが5割減ると聞くと一見すごく効果がありそうなイメージを持ちますが、本当にそうなのか?
しっかりとデータを読み解いていく必要があります。
【間違い解釈】
薬を飲んだ人の5割が入院を回避できる。
と言うわけではありません。
仮に、入院率が1割(10%)の感染症として考えてみましょう。
(100人の感染者に治療薬を投与したと想定)
- 治療薬を飲んだ患者:100人
- 治療薬を飲まなかった場合の入院患者:10人
- 治療薬を飲んだ場合の入院患者:5人
- 治療薬によって入院を回避できた患者:5人
- 治療薬を飲んでも飲まなくても結果が変わらなかった患者:95人
【正しい解釈】
薬を飲んだ人の「入院率 × リスク軽減率 = 5人」が入院を回避できた。
逆に、薬を飲んだ他の人(95人)の結果は変わらなかった。
という結論になります。
一方で、実際に薬を使用する時には次の点に関しても考えていかなければいけません。
- 副作用が発現した患者:?人
- 症状(熱や咳など)が緩和された患者:?人
- 家庭内感染などの伝播を予防できた患者:?人
- 心筋梗塞などの合併症の発症頻度を予防できた患者:?人
抗インフルエンザ薬のオセルタミビル(タミフル)の場合、解熱までの時間を1日短縮、その他の症状に関しても2~3日短縮することが出来ると言われています。
治療薬を服用することで症状が早く改善するなら飲みたい!って人も多いのではないでしょうか?
風邪に対する抗菌薬の場合、恩恵を受けることのできる人の数百倍の確率で副作用が発現する可能性があります。
新型コロナウイルス感染症の場合、正直わかっていないことが多いです。
- 少ないとは言え、副作用が発現する可能性はある。
- 理論上は症状を早く改善? 後遺症も軽減?
- ウイルスの増殖を抑えれば家族への伝播を予防できる?
- 合併症発現リスクの高い基礎疾患を有する人は飲んだ方がいい?
こういった情報を総合的に評価して、判断していく必要があります。
(最新の情報を確認してください。)
評価項目が入院
新型コロナウイルス感染症の軽~中等症患者に対する治療薬の効果(主要評価項目)として「入院」という指標が用いられています。
ここで考えていかなくてはいけないのは、入院の基準はその時々で変わっていくということです。
オミクロン株が発生した当時は全員入院が基本だったのが、今は全く違いますよね。
要するに絶対的(不変的)な指標ではなく、変化していく指標が用いられています。
臨床試験の時には、同じ条件(無作為割りつけ)で両郡比較が行われているはずですが、現在の状況とは異なる可能性も考慮して解釈していく必要があります。
結局飲んだ方がいいの?
その判断に迫られた時、悩まれる方も多いと思います。
絶対にどっちがいいというのはありません。
数字のトリックに惑わされず、正しい情報を正しく解釈していくことが大切です。
最新の情報を医師から聞き、総合的に判断いただければ嬉しく思います。